心をえぐるゴッホ

1888年12月23日の夜、ゴッホはアルルで自らの耳を切り落としました。
上野の森美術館で開催中の「ゴッホ展」へ。
上野の森は、昨年のエッシャー展、フェルメール展、そして今回のゴッホと、オランダを代表する巨星たちが続いていてそこもとても興味深いところ。主催も同じ産経さん。

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ゴッホ展はほぼ全部行っていると思いますが、今回また初めて出合う作品も多く、改めて感動し、震える程の興奮を覚えました。
まず、最初に展示されていた初期の2点の水彩画は、とってもかろやかでモダンで、ゴッホの作品とは思えない程洗練されていました。

今回の展覧会は、ゴッホの人生を変えたハーグ派と印象派との出会いにスポットを当てています。
ハーグ派とは、19世紀後半、オランダの芸術の中心地だったハーグを拠点に活躍した画家たちを指し、ハーグ美術館から多数の作品が来ていました。ハーグでゴッホの師となるアントン・マエフェの作品は詩情的で、雪の中の羊飼いなど素晴らしかったのですが、ゴッホとは数ヶ月で決裂とか。この時期のゴッホは表面的な風景の美より、農民たちの生活の真実を追求したかったようです。
そして、弟テオを頼って行ったパリ。ここでゴッホに影響を与えたモネやルノワールなど、印象派の画家たちの作品も並びますが、モナコ王宮コレクション所蔵の作品などいずれも新鮮な色彩と光のものばかりが集結。ゴッホの作品もまた、鮮烈に急激な変化を遂げます。

会場の壁には、ゴッホが友人との手紙のなかで語った言葉が記されているのですが、特にゴーギャンについての言葉が衝撃でした。それは、「ゴーギャンは画家以前、人として素晴らしいんだ」と。どれほどゴッホがゴーギャンを愛し、過大評価し、共に理想の作品を追求したかったのかが分かり、切なくて苦しくなります。
テオは、ゴーギャンがアルルに行った本当の目的はゴッホに遂に伝えられなかった、と言っていたそうです。

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療養所に入ってからの作品を集めた最後の部屋は、もう圧巻の力強さで、その濃密なタッチ、色彩の世界には息がとまるかと思った程。そして何故か涙が混み上げました。
『糸杉』を中心に『サン・レミの療養所の庭』『蔦の絡まる幹』『薔薇』『夕暮れの松林』・・・。
あの中林忠良展に展示されていたプレス機で刷ったという版画『ガシェ博士の肖像』も片隅にありました。ゴッホを看取ったのもガシェ博士だったのでしょうか。

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