全く知らない作家です。作家ともいえないのかもしれません。それでも銀座のシロタ画廊さんで招待券を戴いたとき、ちょっと見てみたいと、心惹かれる何かがありました。
富貴さん(1903~1969)は美術界で全く知られていなかった女性です。夫の関谷陽(1902~1988)は二科会に属した洋画家で、一応の画歴を残しているそうですが、失礼ながらその方すら存じません。富貴さんの作品に光が当たったきっかけは、2009年に陽の遺作の処理の相談を遺族から受けた美術館の学芸員が、富貴の作品をたまたま目にしたことからとか。
「秘密の絵」は全て無題です。鳥や建築、人物をモチーフにした作例もありますが、大別すれば抽象表現主義、アンフォルメル。大半は紙に油性パステルで描き、亜麻仁油を上塗りして光沢を出した作品が多く、またはパステルで塗りつぶした上から筆の先端でひっかいたような線描画なども。いずれも色彩をぶつけ合わせ、時に激しく、時に叙情的で、時に人間存在の暗部をさらすかのよう。
クレーの影響やカンディンスキー、デュビュッフェらとの共時性が指摘されていますが、ヴォルスやシャガール、ミロやフランソワズ・ジロー、難波田龍起の作品も髣髴され、本当に興味深く鑑賞。なかでも深い緑と鮮烈な赤の作品が印象的で、常設展に向かう壁の3点が特に気に入りました。
富貴は栃木県那須町に生まれ、早くに両親と死別、20歳で兄も亡くなっています。陽とは21歳に結婚し、世田谷区松原で晩年まで暮らします。陽は二科展に出展しながら絵画教室を開き、富貴は画家の夫を支え続けたそうです。勿論生前作品を発表することもなく、制作する姿を周囲の人に見せることすらなかったそうです。ごくわずかな人を除いて200点近くの作品の存在そのものが知られていなかったのです。
会場最後には夫である関谷陽の作品、陽の父親の日本画家、関谷雲崖(1880-1968)の作品も展示されていましたが、はるかに富貴の作品の方が魅力的でした。こちらの美術館で過去に見た展覧会「ジェンダー」「前衛の女性 1950-1975」「イノセンス」等を思い出し、女性であるがゆえ画家になる道を閉ざされた時代、美術教育も受けていない妻の恐るべき才能に驚愕した画家が、その作品を隠蔽し続けたなんて話もありえそうです。それに富貴の作品の多くは心の叫びにも見て取れました。彼女はいつ、どうやって描いていたのでしょう。ふと、一夜に1枚カルトを描いていたパリの画家・クートラスのことが頭をよぎりました。誰に見せるためでもなく、日記のように描かれた絵・・・いまは穿って推測するのみですが、ただ、もし富貴さんの作品が銀座のギャラリーに並んでいたなら、間違いなく手に入れたいと思うのです。
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